新婚旅行 2
誰でも知っているが、
ラスベガスはカジノの町だ。
空港はもちろん、
いたる所にスロットマシンがある。
ホテルの中には
どこまでも広がるカジノの空間。
見上げる天井には本物と見まごう青空が広がる。
こうして
時間の感覚は麻痺してゆくのだろう。
わたしはギャンブルが好きではない。
そういう場所に行っても、
「早く帰りたい」とさえ思う。
旅先にラスベガスを希望したのは
彼であり、
私は他の行先を楽しもうと思っていた。
その日の夜、
ラスベガスのショーと食事を終えて、
ホテル周辺を歩き、部屋に戻った。
窓の外は光輝きまばゆいほどの夜景だった。
しばらくふたりで眺めたあとで彼が、
「オレ、今からカジノに行こうと思うんだけど…どう?」
時差ボケの眠気を耐えた頭で、
やっと眠れる時間がきたのだと思うと、
深夜まで起きていられる気分じゃなかった。
「そう。じゃ、行ってきまーす!」
彼はカードキーを握り、
軽快な足取りで部屋の扉を閉めた。
残った私は夜景をカメラに収め、
豪華なバスルームに歓喜し
横になって、いつのまにか眠った。
目覚めた時には、
窓の外はほんのりと明るくなっていて
今が朝だと気付いた。
隣のベッドを見ると、
ベッドは整えられたままだった。
時計の針は5時を回ったあたり。
呆気にとられる私をよそに
彼は楽しそうに帰ってきた。
カジノで知り合った
日本人ガイドと一緒だったと、
一時はわりと儲けたけれど、
共に軍資金を使いきって帰ってきたのだと。
新婚旅行 1
結婚式と2次会を終え、
その日は式を終えたホテルに宿泊し、
翌朝から新婚旅行に向かう予定だった。
行き先はラスベガス。
空から見える景色は
砂漠の中に町がある不思議な光景だった。
時差の関係で体内時計は深夜。
現地ガイドさんは、
どんなに眠くても寝てはいけないと言う。
眠気覚ましにホテル内を探索した。
流行りの新しいホテルは
アミューズメントパークが併設されていて
どのホテルに行っても楽しめた。
「成田離婚」という言葉があるように
私と彼との些細な価値観の違いは
旅行先でも感じることがあった。
それでもわずかな交際期間の中で結婚し、
互いに譲るところが残っていたから
まだよかったのだろう。
異国の地での初めての夜、
翌日からの予定を楽しみにしていた私に
まさか、こんなことが起きるなんて…
B09 地球の歩き方 ラスベガス セドナ&グランドキャニオンと大西部 2016~2017
- 作者: 地球の歩き方編集室
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド・ビッグ社
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一攫千金、得た人もいるにはいるそうです。
20年前 4
婚約披露パーティー。
彼が会場を決めて友人たちを招待した。
会場には互いの友人が集まり、
楽しい時間を過ごしていた。
お開きの時間が迫るころ、
会場の外で会った友人が手招きした。
「ねえ、彼のお義妹さんだっけ。あの二人、大丈夫?」
何のことかと話を聞いてみると
すぐそこの物陰で
泣いた義妹の肩を彼が抱いていたのを見たという。
心配して教えてくれたが、
どういう事情なのかわからなかった。
翌日、彼に尋ねてみた。
「オレと義妹?変な仲ではないよ。
泣かせたのは弟だよ。あいつ、他に好きな女がいるらしい」
結婚していた弟夫婦の危機。
「あの子たちと一緒にいて支えたい」
同居解消は義父母の思いだった。
そして
結婚式が始まった。
20年前 3
仲人を頼んだその数日後、
「お世話になっている人に紹介したいから」
ある一人の女性に会った。
一人暮らしの女性の部屋で
部屋に似合わない大きなベッド。
枕元の写真立てには
見覚えのある顔と目の前の女性。
「そう。Aちゃんの所に行ったんだ」
純粋すぎる自分でも
この人がどういう人なのかすぐにわかった。
「おめでとう。幸せになりなよー」
送り出されたものの、
何とも複雑な気持ちだった。
写真立てにあったのは
Aちゃん
仲人上司の顔だったからだ。
そういう関係があるものだと
頭でわかっていても
結婚を控えた自分は納得ができなかった。
結婚式までの時間、
何度か会うたびに
「この人に仲人を任せていいのか」
ずっと気分が悪かった。
自分には関係のないことだと思い込み、
過ごすしかなかった。
そして、
友人を招いての婚約披露の席を開いた。